ジェンガ女

教室、小学校4年生。
彼女は優等生であろうとしていた。しかし私は彼女が優等生という称号を背負うレベルの人間でないということを悟っていた。クラスの半数位を占める凡庸な生徒のことは騙し通せられたかもしれないが私や幾人の生徒のことは騙せなかった。
私は見てしまった。漢字テストの折、布製の薄黄色い筆箱にその日テストされる感じが薄く書かれていたことを。それも毎回の漢字テストの時にはいつもそうしているようで、筆箱は鉛筆の鉛で黒ずんでいた。私は漢字テストが終わったあと、あっ、と彼女の筆箱を指さした。彼女は顔を赤くしうろたえながら平静を装い私の発言を無いものとして扱った。
「おい、漢字・・・」
私の発言を無視し彼女は前を向いた。狼狽している彼女を見て私はもっと彼女を崩してみたいと思った。
教室、中学校2年生。
中学校2年になって数年ぶりに彼女と同じクラスになった。朝、1時間目の数学のファイルを準備する彼女。ファイルには「mathmatics」と記載されていた。私はジェンガを高く高く積み上げて、高くなればなるほどそのジェンガを壊したい衝動に駆られるあの感覚にその時襲われた。
「mathとmaticsの間にeが無いよ?」彼女は私が何を言っているのか分からない風だった。辞書で調べてみなよ、私は言った。彼女は電子辞書で調べはじめ、私の言ったことがわかると「まちがえちゃった」と伏し目がちに、恥ずかしさを隠すように言った。彼女はぎりぎりの所でバランスを取っている風に見えた。そんな彼女を見ていると私はジェンガを崩したくなる。

広告
カテゴリー: Uncategorized パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中