mixiに書いた日記

灯油家族   全体に公開
2013年01月13日01:14
1年前の年末に実家に行った。帰ったとは言わない。私にとってここはホームという感じがしないからだ。だから実家というのも親が住んでいる家、という意味で使った。私の物理的なホームは自分が一人で住む東京の一室である。その年末の訪問はそんな気持ちを一層強めた。
呼び鈴を鳴らすと母親が出た。玄関には灯油の入った赤いタンクが置いてあって、匂いが鼻を突いた。少し嫌な気持ちがした。リビングに入ると灯油の微かな匂いが熱気と共にあったが、しばらくしたら慣れてしまった。
私が帰らぬ間にこの家は変わったと思った。あらゆる家具が新しくなっている。炊飯器もテレビも冷蔵庫もドライヤーも。それと、なんだか妙な感じがした。別の部屋に行こうとすると母親が私を制した。面倒で、かつ母親に諦めていた私はその部屋に入るのをやめ、リビングに戻った。この家は変わってしまっていて、母親は私に何か隠していることがあると思った。一体何を考えているのだろう。苛立ちと諦め、それだけが私の中を占めていた。
「食べていきな」母は言った。
「いや、いい」、という私の返答にもかかわらず煮物をテーブルに出してきた。
「味見してみて」
「さっき食べたばかりだから」と空腹な私は言った。
なんで味見などさせるのか。私は母親が毒を盛ったのではないかと疑って恐ろしくなった。
私は母親でさえ信用出来ないということに気づいた。いや、あるいは母親は信用出来ないだけなのかもしれないけれど。
そして自分の住む家に帰る間、揮発油である灯油がわたしの骨を溶かしやしないかという疑念を晴らすために私にとっては珍しい頭痛を抱えながらiPhoneを弄っていた。そしてまたその頭痛が灯油が私を溶かしているという疑念をいっそう強いものにしたのだった。
広告
カテゴリー: Uncategorized パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中